国産AIへの税金投入は違うと思う。
国内企業の投資による国産AI開発とし、そのためのプラットフォーム支援ならわかる。
基本的にマーケットに委ねるべき話で、政府は金ではなく法律などの環境を整備するのが役割だろう。
しかし、100人規模の技術者って、舐めてんのか?
Yahoo!より、
官民で国産AI開発、ソフトバンクなど出資で新会社…世界潮流の「1兆パラメーター」目指す
12/21(日) 5:00配信読売新聞オンライン

国産AIに税金投入は正解か?──「100人規模」で“1兆パラメータ”は現実的なのか
「国産AIに税金投入」。言葉は勇ましい。
でも、AI開発は気合いではなく、だいたい人数×時間×計算資源×データ×運用で殴る世界です(たまに天才がバグとして混ざる)。
今回話題になっている計画では、ソフトバンクなどが出資する新会社に、AI技術者が100人規模所属する見通し、そして「1兆パラメータ級」を目指す——と報じられています。東洋経済オンライン
ここで一度、冷静に「世界の相場観」と照らしてみましょう。
“世界の相場”は何人で回しているのか(ざっくり比較)
Google(親玉の体力)
Alphabet(Googleの親会社)の従業員数は、年次報告ベースで約18万人規模です。Last10K
もちろん全員がAI研究者ではありません。が、重要なのはここで——
- AIは研究だけで完結しない(巨大インフラ、プロダクト実装、セキュリティ、法務、営業、運用…)
- それらを社内で持てる体力がある
という点です。
Google DeepMind(AI側の中核)
英国政府のAI産業レポートでも、主要企業としてGoogle DeepMindが言及され、雇用・収益の規模感の文脈で扱われています。GOV.UK
(※この種の公的レポートは、個社の“正確な研究者数”までは出しませんが、少なくとも「世界級の雇用規模の一角」扱いです。)
xAI(X系AI:伸びるけど荒い)
xAIは成長が速い一方で、組織の揺れも報じられています。たとえばReutersは、レイオフ(人員削減)の動きとして報じています。ウィキペディア
ここから分かるのは、「資金があっても、人材確保と組織運用は別ゲーム」ということ。
で、日本の「100人規模」ってどうなの?
報道ベースでは「AI技術者を中心に100人規模」東洋経済オンライン
これ、できる/できないで言うと、
- 研究試作(PoC):かなりできる
- 特定分野に絞った強いモデル:戦える可能性はある
- “世界潮流の汎用フロンティアモデル”を継続運用:かなりキツい
が現実味です。
なぜなら、フロンティア級は「モデルを作って終わり」じゃなくて、
- 継続学習・評価(安全性/偏り/幻覚)
- データ調達・整備(権利処理が地獄)
- 推論コスト最適化(電力・GPU・配信)
- 企業導入の個別対応(B2B地獄)
- 事故対応(これが一番高くつく)
まで含めた**“運用産業”**だからです。
100人は“研究室としては大きい”けど、“国家級インフラとしては小さい”。
税金投入が「正解」になり得る形
あなたの主張(市場主導+政府は環境整備)は、かなり筋がいいです。
ただ、政策として「税金ゼロ」が正解とも限らず、勝ち筋がある税金の使い方はあります。
1) 研究費でモデルを作るより「共通土台」に投資する
- 公共データの整備、匿名化、ライセンス整備
- 評価ベンチマーク(日本語・行政実務・産業特化)
- セキュリティ標準、監査枠組み
→ これは民間がやりにくい(回収が難しい)ので、政府の役割になりやすい。
2) “国産モデル”より「乗り換え可能性(競争性)」を確保する
1社・1モデルに寄せると、失敗した時に詰みます。
なので、政府がやるべきは「特定企業を勝たせる」より、
- 複数社が参入できる要件
- 切替できる調達設計
- 特定ベンダーロックを防ぐ標準
の設計です。
3) “100人”が舐めてるように見えるのは、そこだけ切り出すから
100人が悪いというより、
100人で“何を達成する設計なのか”が曖昧だと、炎上しやすい。
- 目的:汎用モデル世界一?
- 目的:日本語・行政・産業の実装で勝つ?
- 目的:安全保障上の自律性(供給網含む)?
ここを分けないと、議論が全部ゴチャ混ぜになります。
結論:税金投入の是非は「人数」ではなく「設計」で決まる
- フロンティア総力戦をやるなら、100人は少ない(運用まで含めると特に)
- でも、領域を絞った実装・評価・基盤整備なら、税金投入は合理的になり得る
- 日本の勝ち筋は「世界と同じ土俵の腕相撲」より、制度・データ・運用・標準で“土俵そのもの”を作る側に寄せた方が堅い
…というのが、マンパワー現実主義の結論です。
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