八潮市の下水道陥没事故。
地下に埋められた施設の点検は難しい。
また、土、というものは、その動きがよくわからないのが現状。
また、効率的にという整備の考え方が間違いだ。これまでの効率的というのは低コストで早期に整備できるというのが判断基準。ある意味、これしかやってこなかったのがこれまでの土木。
土木の人たちが言うように、これからお金がなくなるというのなら、一度作ったら、100年メンテナンスフリーのようなインフラ以外は作ってはダメだろう。
そのため、当面、インフラの新設、また、改良する時も100年保つことを基準とする必要があり、必要な金額は当然上がる。
このことから、これからはインフラ整備費、改良費のコストが上昇するが、それをしないと100年先が危ないと正面からインフラ予算の増額を訴えないで、金がなくなるからもうインフラ整備に期待するなというのは、なんと無責任な技術者だろうか?
土木のデタラメさに辟易してしまうのは私だけだろうか?
Yahoo!より、
八潮市の事故が示す下水道の危機…インフラを維持・拡張する時代から“しまう”発想へ、下水道の「可視化」を急げ
12/23(火) 5:00配信Wedgehttps://news.yahoo.co.jp/articles/2366b51adee3c2b40c9dd619df5062c249d560e2
下水道をはじめ巨大なインフラをこのまま維持し続けることの難しさが、日本各地で露呈し始めている(ISTOCK-TONKO/GETTYIMAGES)
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は日本のインフラが抱える弱点を露わにした。地下約10メートルに敷設された下水道管が腐食により破損し、時間をかけて土砂が流入し空洞が大きくなり、道路陥没につながった。 【図表】多くの自治体に存在する「未了延長」区間 地下の空洞の検知は現在の技術では難しい。一般的な地中レーダーは地下数㍍までが限界とされる。また、埋設されているのは下水道管だけではない。水道管、ガス管、通信ケーブルなどが自治体の部署や事業者ごとの管理のもとにバラバラに敷設され、情報は一元化されていない。 さらに、近年の気候変動の影響は、下水道の脆弱性を高めている。高温などの原因により管内で硫化水素が発生しやすくなり、硫酸へと変化して管を内側から腐食させる。また、短時間強雨の増加によって管内の流水量は増え、破損箇所の拡大や土砂流入を引き起こす。 老朽化、地震、豪雨が複合するケースもある。老朽化した管が地震でわずかにずれ、その後の豪雨で破損する。あるいは地震による勾配の変化で排水が滞った状態に豪雨が重なる場合もある。3つのリスクの関連性を考慮してこなかった点もインフラ管理の死角といえる。 これらのリスクに対応する体制も、下水道職員がこの約25年で4万7000人から2万6900人へ減少する中では限界がある。必要な点検が追いつかず、実態把握が後手に回る自治体は今後増えるだろう。
下水道問題の真相を示す「時間軸」と「未調査地域」
日本の下水道普及率が飛躍的に伸びたのは1970年代後半から80年代にかけてだ。大都市圏や中核都市では60〜70年代に整備が進んだ地域が多く、すでに老朽化の荒波を真正面から受けている。一方で、人口減少が進む地方の整備時期は都市部より10〜20年遅い。このずれはプラスに捉えれば都市部と地方で老朽化のピークが重ならないことを意味する。この時間を活用し地域ごとの戦略を設計する必要があるだろう。 都市部ではすでに深刻な問題が進行している。民間施工会社の人材不足から、自治体が発注しても入札不調となる事例が相次ぐ。「自治体の提示額では赤字になる」という理由で民間企業が辞退する状況は珍しくない。こうした状況は10年後には地方でも避けられないだろう。人口減少地域では、老朽化・財政不足・人材不足が同時進行するため、都市部以上に身動きが取れなくなる可能性が高い。 さらに注目したいのが、下水道施設の更新費用の高さである。上水道管の更新費用が1㌔・㍍あたり約1〜2億円とされるのに対し、下水道管はその3〜4倍とされる。大口径で地中深く埋設され、周囲に他の埋設物が密集しているケースが多いため、工事の難易度は桁違いである。大量の老朽管が更新時期を迎えれば、自治体の財政が耐えられなくなるのは明白だ。 現状の改善策として、しばしば提案されるのが「複線化(多重化)」である。これは主要な幹線にバックアップを設け、どちらかが故障しても下水処理を継続できるようにするという発想だ。理屈は合理的だが、複線化によって管路を増やすと建設・維持管理費も膨らむ。 老朽化が進む都市部ではこの案を採用せざるを得ないだろう。なぜなら容易には解決できない重い課題があるからだ。それは国土交通省「下水道管路の全国特別重点調査」の「未了延長」から推察できる。 未了延長とは、調査が行われていない管路の長さであり、下水道管内の水位が高い、河川を横断するために管の接続が複雑など、調査が難しく作業の危険をともなう。国土交通省によれば、千葉県流域下水道では約6.18キロ・メートル、尼崎市下水道では約4・59㌔・㍍が未調査のまま残されている。 老朽化の進度が把握できず、空洞化や浸食が進んでいる可能性があるにもかかわらず、リスク評価の手がかりすら乏しい。こうした地域は複線化によって下水のルートを変えることで点検や修理が可能になる。 しかし、複線化は、短期的なリスク回避には寄与するが、人口減少・財政縮小の構造問題には対応しきれない。むしろ維持管理費を押し上げ、次世代の負担を増やす。 そこで総合的判断が必要となる。どの地域から更新し、どの機能を守り、どのインフラを縮退させるのか──。日本の下水道はいま、維持でも拡張でもなく、選択と集中、そして「しまう」という発想の転換を迫られている。
八潮市の下水道陥没事故は不可避だったのか
――それともコスト縮減の帰結だったのか
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した下水道管の腐食・破損による道路陥没事故は、日本のインフラが抱える構造的問題を一気に可視化した。
地下約10メートルに敷設された下水道管が長年の腐食により破損し、そこから土砂が流入して空洞が形成され、最終的に道路が陥没したとされる。地中レーダーによる空洞検知は地下数メートルが限界であり、都市部では下水道管、水道管、ガス管、通信ケーブルなどが錯綜し、しかもそれらの管理情報は縦割りで分断されている。老朽化、地震、豪雨といったリスクが複合すれば、事故発生の確率が高まるのは当然である。
この意味で、「事故そのもの」は確率論的には避けがたい側面を持つ。だがそれは、「仕方がなかった」という意味での不可避ではない。むしろ問うべきは、
この事故は、長年続いてきたコスト縮減志向の必然的帰結ではなかったのか
という点である。
「住めない」と言う責任
さらに重要なのは、インフラ側が「できないものはできない」と明言する責任である。
ただしそれは、事後的に「住めない」と突き放すことではない。
インフラ寿命・更新可能性・財政制約を踏まえたうえで、事前に、明示的に、公に示すことが行政に求められる。
すなわち、
- この地域のインフラはあと何年維持できるのか
- 更新可能なのか、不可能なのか
- 更新できない場合、いつまで居住が前提となるのか
といった情報を、居住・投資・転入の判断に先立って提示することが、公共の責任である。
維持不能な地域については、インフラ寿命を考慮した上で、
「将来的に整備・更新ができないため、居住継続は前提とされない」
ということを事前に示す必要がある。それは冷酷に見えるかもしれないが、沈黙のまま先送りするよりははるかに誠実であり、結果的に人々の選択の自由を守る。
必要な幹線は残し、枝線は縮退させ、分散型処理や代替手段を組み合わせる。「維持か拡張か」ではなく、「選択と集中」と「しまう」という発想への転換が不可欠である。
結論
八潮市の事故は単なる老朽化事故ではない。それは、
「低コスト・効率重視」という過去の合理性が、現在の制約条件の下ではもはや非合理になった
ことを示す警告である。
必要なのは、
- 少なくとも100年保つことを前提とした設計基準への引き上げ
- そのための大幅な予算獲得と社会的合意
- インフラ寿命を踏まえた居住可能性の事前明示
- インフラを永遠の装置ではなく「世代間契約」として扱う視点
である。
インフラはコンクリートでできているようで、実は社会の時間設計そのものである。その設計を誤れば、事故は不可避ではなく必然になる。
――そうならないために、いまこそ整備思想そのものを問い直す必要がある。


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