長期優良住宅が30年以上が最低基準となっていることについて補足

長期優良という割には、たった30年以上という最低基準=業界標準で上限ということについて先のエントリーで書いた。
しかし、これについて、参議院でまとめた報告によるといろいろと見えてくるものがある。
あるというか、ちょっとありすぎ。
長期優良住宅普及促進法の成立と課題
~「200年住宅」構想から住宅の長寿命化を考える~
国土交通委員会調査室 横関洋一
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2009pdf/20090130154.pdf
この中からは、まず、30年以上でよいという部分については、やはり国会で議論になったそうである。
以下のような答弁がなされたと紹介している。
・・・維持保全の最低期間を30 年に設定していることについて、その趣旨は、長期優良住宅
の耐久性が30 年ということではなく、当初に余り長い期間、維持保全計画をお願いして
もリアリティーがないこと、世代交代の期間をおおむね30 年だと考えたことから長期優
良住宅の認定を受けるのであれば最低30 年以上の計画をつくってほしいということであ
るとの答弁があった。
―つまり30年での世代交代をある意味良しとしているということと、30年以上の計画の意味がないとも取れる内容。実際問題、そんな先のことはわからないということと、ハウスメーカーも30年を超えるような長期保証なんてたまらない、ということに配慮をしたということだろう。
また、消費者からのニーズについても、
・・・果たして、長期優良住宅は消費者(住宅購入者)に支持されるこ
とになるのであろうか。
最大のハードルは一般住宅と比して2割高いとされる建設費の存在であろう。長期優良
住宅の最大のセールスポイントである「200 年住宅」というロングライフ性が、逆に長期
優良住宅の普及の足を引っ張ることにはならないだろうか。・・・
―と否定的だが、それは先のエントリーでもアンケートを紹介したところ。
また、そもそも30年と喧伝されている日本の住宅の寿命の短さもバイアスかけすぎじゃないかとも指摘している。
・・・「滅失住宅の平均築後年数」は、文字どおり、
除却を含めて滅失した住宅の新築後の経過年数の平均年数をとったものである。この方法
については、人口統計や信頼性工学の世界では「死んだ子の歳を数える」と揶揄される方
法で、これをもって母集団の平均寿命だという論理を展開すれば嘲笑を浴びる。にもかか
わらず、国土交通省の資料を始めとして流布している情報が、このような方法を根拠に日
本の住宅の平均寿命は約30 年と信じられているのは、全く嘆かわしいとの指摘がある13。
このような指摘も意識してか、国土交通省の資料でも、「滅失住宅の平均築後年数」と
いうタイトルを使い、注書きで、新築住宅の平均寿命(最近新築された住宅があと何年使
われるかの推計値)とは異なる、としているのもある14。しかし、我が国の住宅の寿命が
約30 年と一般に信じ込まれているのならば、その誤解を解くため、国土交通省は、自ら
新築住宅の平均寿命を計算し、これを公表すべきことが求められるのではなかろうか。
一方、早稲田大学理工学部の小松幸夫教授は、厚生労働省が人の平均寿命を計算する方
法を参考に、ここ20 年余りにわたって住宅・建築物の寿命を計算している。その方法で
は残存率50 %をもって平均寿命としているが、その最新の調査結果によれば、我が国の
住宅の平均寿命は鉄筋コンクリート造りで45 年から57 年、木造で44 年から54 年程度と
推計している15。これは、国土交通省の計算結果とはおよそ20 年の差があることになる。
ここにおいて重要なことは、50 年を過ぎてもまだ半数が残存していることである。・・・
―かなり辛辣であり、この部分からは、本来30年以上というのは放っておいてもクリアしている、という指摘。
 このことは、仮に長期優良という制度が普及しなくても、掲げた政策は(すでに)実現されることが確実ということで、失敗の政策とはならないという、安心な政策であるということでもある。
また、大きな問題である、30年後の価値、みたいなものについては当然耐用年数の話となる。
・・・減価償却資産の耐用年数は、税制など政策的な観点から短縮されてきた経緯
があるが、現在、鉄筋コンクリート造りは47 年、木造で22 年となっている16。この法的
耐用年数を根拠に、木造住宅は建築後20 年を経過するとほとんどゼロの評価がなされ17、
それが我が国の住宅が短命になっている一因となっているとの指摘がある。また、我が国
の国民資産額(国富)のうち住宅資産の占める割合は9.4 %とアメリカの30.6 %と比較
して著しく低いことが、今回の「200 年住宅」をめぐる議論で展開されている18。この住
宅資産の計算では、昭和46 年当時の住宅の法定償却率に依拠しているといわれる。この
際、住宅の実態にあった法定耐用年数はどうあるべきか、また、住宅資産の評価方法が日
米で同じかどうか、改めて検討してもよいのではないか。・・・
―そもそも法定耐用年数をどう考えるかということがある。
 木造よりRC造が耐用年数が現在でも長いが、長期優良の木造なら40年とかに、せめて30年にしてもよいとすぐ思うところである。これを変えない限り、投資をする側からすれば、減価償却が早く終わってしまい、中古流通においてもレバレッジが利かせられなくなる、ということからはデメリットになろう。
 一方、中古住宅の流通価格は当然高くなる。
 安ければ多く売れて、高ければあまり売れないというのは常識である。
 どこを目指しているのか今一つわからなくなってしまう。
ということで、参議院の調査室の鋭い突込みにまずは敬意を表したい。

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